2026年7月25日に開催されたミルク一万年の会主催の交流会では、ヨーグルトについて講演が行われました。この中で、コストヴァ・イリヤナさん(ブルガリア大使館)、ヨトヴァ・マリア先生(立命館大学)、および向井智香さん(ヨグネット)から興味深いお話を聞くことができました。
一番驚いたことは、ブルガリアには「ブルガリアヨーグルト」と呼ばれるようなものはなく、各家庭で代々作られて、当たり前のように食べられているヨーグルトしかないそうです。それが強いて言えば「ブルガリアヨーグルト」なのだそうです。かつて、明治乳業(現 明治)はブルガリアの伝統的家庭料理であったヨーグルトを日本で試作することに成功し、市場に定着させました。世の中にないモノを作り出し市場に定着させることは、技術的にも、営業的にも大変なご苦労をされたことと想像します。
そこで、“5年後に流行る乳製品はどのようなものか” についてチャッピー(Chat GPT)に聞いてみました。その結果を表に示します。

注目すべき1点目は、高たんぱく質ヨーグルトです。水切りタイプや膜濃縮タイプ、あるいは脱脂粉乳などを添加し、製品1個でたんぱく質を20g以上摂取できるものが該当すると思います。すでにいわゆるギリシャヨーグルトなど市販されているので、今後このようなヨーグルトのシェアが広がるのでしょう。また、高たんぱく質という点からフレッシュタイプのチーズにもチャンスがあるかもしれません。最近、雪印メグミルクから1本(230mL)で10gのたんぱく質を摂取できる「雪印コーヒーPROTEIN」(写真1)が発売になったそうです。
2点目の腸活特化ヨーグルトは現在の市場でも広がっているビフィズス菌、プロバイオ菌やプレバイオなど健康訴求タイプです。最近では睡眠、免疫、ストレス改善、骨密度や認知機能などが訴求されています。昔は機能性をヒト試験で確認し、国が認可したいわゆるトクホ商品のみが国から許可された文章からなる機能を表示できましたが、現在は企業の責任で機能を表示する機能性表示食品が増えているため、個人的にはどこまで信用してよいか戸惑います。
3点目は精密発酵ミルクです。ここで“精密発酵”とは、遺伝子工学の技術を使って微生物に特定の遺伝子を組み込み、狙った特定の成分だけを効率よく作らせる最先端の発酵技術です。遺伝子工学の技術を用いたレンネット(商品名 カイマックス)は世界中で使用され、カイマックスを使ったチーズは皆様も日常的に召し上がっていることと思います。また、20~30年前のことですが、ホエイたんぱく質の一つで多様な機能を有する不思議なたんぱく質であるラクトフェリンの遺伝子を微生物に組込み、大量にラクトフェリンを生産させる試みが米国で行われているという記事を読んだことがあります。その後、実用化に成功したのかどうなのかは知りません。
4点目は機能性ミルクで、「牛乳を飲む」から「ある目的のために飲む牛乳」の需要が高まると予想されています。しかし、現在の乳等命令では普通牛乳では何か足したり、引いたりできません。加工乳、乳飲料など牛乳とは別の扱いとなります。現在の市場にはカルシウムや鉄を強化しもの、乳糖不耐症の方に向けたもの、骨密度の維持・強化を目的にMBP(乳塩基性たんぱく質)を加えたものなど健康維持を目的にした牛乳類が市販されています。
また、健康志向だけではなく、楽しむために食べる乳製品もあり得るのではないかと考えます。例えば、最近CVSで発売されている「まぜまぜスイーツ」(写真2)はヨーグルトやクリーム、果汁などが層になってカップに充填され、これをストローで混ぜてそのストローで食べる新感覚のデザートです。このように混ぜることによって新しい食感や風味を愉しむジャンルは既存市場にはなく、新しい市場を形成する可能性があります。
5点目は発酵系・新世代チーズです。例えば、精密発酵技術を用いた乳たんぱく質や微生物などを用いて新しい物性や風味を付与したチーズが考えられます。実際、麹菌を利用したチーズが蔵王酪農センターから発売されています(当コラム 2021年8月20日参照)。このチーズ(商品名「麹チーズ 蔵(KURA)」)は精密発酵技術を使用していませんが、今後もし精密発酵技術で麹菌を改良すればより安定的に製造し、組織や風味もよりよくなる可能性が考えられます。
以上、チャッピーの回答に私の個人的な考えを交えて5年後に流行る乳製品を想像してみました。皆様もあれこれ考えて、是非史上初の製品を開発し、市場を賑わせてくださいね。
「乳科学 マルド博士のミルク語り」は毎月20日に更新しています。
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