フォルマ嬢のチーズことば

チーズ用語を解りやすく説明していきます

索引(50音順)

原産地呼称統制/保護指定原産地表示】 (A.O.C.) (D.O.P.)
殺菌乳
チーズの旬
チーズの分類】 (フレッシュタイプ) (パスタフィラータタイプ) (白カビタイプ) (ウォッシュタイプ) (シェーヴルタイプ) (青カビタイプ) (圧搾タイプ) (加熱圧搾タイプ
ナチュラルチーズ
乳糖(ラクトース)
プロセスチーズ
ホエー,ホエイ (乳清)
無殺菌乳
山羊乳のチーズ
羊乳のチーズ
M
MG

チーズ用語

【ナチュラルチーズ】
チーズはミルクから作られる…ってことは皆さんご存知ですよね。母牛(または山羊や羊)から絞ったミルクを乳酸菌や酵素の働きによって固めたものがいわゆる「ナチュラルチーズ」。これは大きく分けて、さらに乳酸菌や酵素に働いてもらって熟成させる「熟成タイプ」や、あえて熟成させずに食べる「フレッシュタイプ」があります。 つまり「乳酸菌(酵素)が生きている」状態が「ナチュラルチーズ」ってこと。生きているわけだから、微生物君たちも人間と同じで「食べたり」「出したり」「つくったり」しながらチーズのたんぱく質や脂肪をアミノ酸や脂肪酸に分解していく…これが時間の経過で「熟成」という変化をしていくナチュラルチーズの特徴でもあるの。 但しちょっとした例外?もあって、ロングライフタイプの「缶入り(又は充填パック」カマンベール」などは、食べごろに密閉容器に入れて殺菌にかけるため、ほぼ変わらない状態で長期間保持できます。でも「殺菌」とは言っても微生物君たちは大幅に減少するだけであって、全て死滅しているわけではないらしい。 ただ、どちらにしてもご家庭でのチーズの居場所は「冷蔵庫」にてお願い!
【プロセスチーズ】
「ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いって?」よくある疑問ですよね。プロセスチーズとは、簡単に言うとナチュラルチーズをいったん溶かして固めたもの。つまり加熱溶解しているため、微生物は死滅し、「熟成」という変化をもたないチーズ。その分、品質は安定して保存性に優れています。 「チーズって溶かすと脂が分離しちゃうのでは?」と考えちゃうけど、チーズフォンデュに入れるコーンスターチと同じように、「乳化剤」を用いているため脂肪分が分離することなく固めることができるのです。(ちなみにフランスでは「プロセスチーズ」のことを「パート・フォンデュ(Les Pates Fondues)」と言います) いつでも味が安定して美味しいチーズがプロセスチーズ。とはいえ、保存は10℃以下(10〜0℃)が適切で、開封後はなるべく早めに使用すること。6Pチーズやスライスチーズなど、日本の家庭での消費量が多いのもプロセスチーズ。
【無殺菌乳】
仏:au Lait Cru 絞ってそのまま何も加工していない生(なま)のミルクのこと。 「無殺菌乳でつくったチーズって特別なの?」と思うけど、無殺菌乳の中には、その地域に住んでいる微生物君が生きていて、チーズになった時、彼らがその「土地の味」をつくりだす一因を担っています。愛郷心の強い(?)フランスやイタリアでは、こういった「おらが村の味」を大切にし、その素となるミルク(無殺菌乳)を重要視しているため、法律で「無殺菌乳」しか使用できないチーズもあるんですよ。
【殺菌乳】
日本で市販されている牛乳のほとんどが「超高温殺菌乳(UHT)」というタイプ。このミルクは「130℃で2秒の殺菌」という高温で処理されるため、たんぱく質が熱によって変性したり、ほとんど「滅菌(微生物が死滅すること)」に近い状態に処理されるため、乳酸菌などのチーズ造りに重要な微生物が死滅してしまい、チーズ造りには向きません。 チーズで「殺菌乳」といえば、「低温殺菌乳(63℃で30分もしくは75℃で15秒など)」のことを指します。(ちょっとした高級スーパーなどで見かけますよね) 低温で処理することによってたんぱく質の変性を防ぎ、チーズにとって大切な微生物を生かしたまま、チーズ造りに用いることができるのです。 なお、日本では「乳等省令」という法律によって、原料乳は殺菌するように定められています。
【ホエー,ホエイ (乳清)】
英:whey 仏:recuite 伊:siero ミルクからチーズになる部分を取り除いた残りの液体が「ホエー(乳清)」。パックヨーグルトを開けたときに上面に溜まっているアレと同じ。 この中には「乳糖」と「乳清蛋白質(ホエー蛋白質)」が溶け込んでいて、最近話題の「ラクトフェリン」など、生理的にも機能性に富んだ成分を含んでいるの。 通常のチーズを造った後、ホエーから「ホエーチーズ」を造ることがあります。特にイタリア産の「リコッタ」が有名。
【乳糖(ラクトース)】
ミルクを凝乳酵素やレンネットで固めた際に、ミルク中に含まれている「乳糖(ラクトース)」はホエーに移行します。つまり、チーズはホエーを分離して造るため「乳糖」がほとんど含まれていません。 そのため、日本人を含む黄色人、黒人などに多い、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする「乳糖不耐症(低ラクターゼ症)」の方にはチーズはもってこいの乳製品なの!
【チーズの旬】
「チーズにも旬ってあるの?」とお思いでしょうが、ちゃんとあります。チーズにとって旬とは製造+熟成期間=出荷期間だけではなく、いわゆる〝味がのる〟時期のことです。 お母さん(牛・山羊・羊)が子供を生んでおっぱいを出している期間がチーズの製造期間になりますが、特に、春から初夏にかけての勢いの良い一番草、山岳地域では初夏から夏にかけて咲く花やハーブを食べた放牧中のミルクがチーズにとって良質な原料となります。 つまり、そこに熟成期間を加えた時がそのチーズの旬になるんです。
【山羊乳のチーズ】
英:Goat ゴート 仏:Chevreシェーヴル 伊:Capraカープラ お団子、丸太、ピラミッド。木炭粉をまぶした色黒や水分が抜けてシワシワ、カチカチ…などなど、見た目にもバリエーションが豊かで小振りなモノが多い山羊のチーズ。最近では日本のチーズ専門店や高級スーパーなどにも大分見られるようになってきましたね。 山羊は土地により若干異なるものの、主に晩冬から春にかけて子供を生むので、小型の多い(出荷するまでの熟成期間が短かい)山羊のチーズの旬は春〜夏と言われています。 フレッシュなうちはしっとりとして爽やかな酸味があり、日本人の言う「山羊臭さ」も控えめで初心者向き。熟成してくると(主に乾燥熟成させるため、水分が抜け小さく締まってきます)酸味はおだやかになり、山羊特有の香りとコク、フランス人の言うところの「ノワゼット(=ヘーゼルナッツ)」のような味わいが出てきます。このように「食べ頃」は消費者の好みによってその時々に楽しむことができ、中には小型のものでも数ヶ月熟成し、カチンコチンにしたものを好む方もいるようです。但し、山羊のチーズの保存&熟成は難しく、チーズ自体が不健康だったりややしてムレたりすると、その特有の「山羊臭さ」が突出しやすいのも特徴です。 ちなみに、木炭の粉(主にポプラやブドウ)をまぶした色黒君ですが、これは山羊チーズ特有の酸味を和らげ、適度に水分を保持しながら熟成させるためのもので、外皮ごと食べてもOK。口に入れても「ジャリッ」といった食感は無いのでご安心を。
【羊乳のチーズ】
英:Sheep シープ 仏:Brebis ブルビ 伊:Pecorino ペコリーノ 羊は人間の家畜としての歴史は牛より古く、紀元前1万年前にはメソポタミア北部ですでに家畜として飼われていたほどです。成分的にも牛や山羊等と比較して、蛋白質が最も多く乳脂肪も高いので、そのまま飲料にするには濃厚過ぎますが、そのミルクから作ったチーズは、コクのある、羊乳チーズ特有のほのかに甘みのある味わいになります。また、バリエーションも多く、小型の柔らかめのチーズからやや大型の固めのチーズまで様々です。
【MG】
仏:Matiere Grasse マチエール グラース 伊:Grasso sulla Sostanza Secca 英:Fat in Dry Matter 主にフランス産チーズのパッケージを見ると「MG○%」と書いてあるのがありますね。これは「Matiere Grasse」の略で、直訳すると「脂肪分」のことですが、チーズに表記してある場合、「固形分中の脂肪分」を表示しています。そう、チーズは熟成していく段階で水分が抜けていくため、水分量を含んだチーズ全体量の脂肪分として正確に表記しにくいからなのです。ですから例えば45%と表記してあっても、チーズ全体量の45%がまるまる脂肪分…というわけではないのです。 また同じような表示に「Mat.Gr / Matiere(Mat.) Seche○%」といったものもありますが、これも固形分中脂肪分のことを示しています。 似たような言葉で「Mat Gr / Produi fini ○%」がありますが、Produi fini=製造終了時、つまり包装された時点での全成分中の脂肪分のことで、いわゆる100g中の脂肪分のことを示しています。(英Fat 伊Grosso)
【チーズの分類】
チーズの分類方法は様々で、チーズによっては同じ名前でもフレッシュなうちに食べるタイプと熟成させて食べるタイプなど、ひとくくりにするのは難しいのですが、ここでは分りやすい8つのカテゴリーに分類しました。
フレッシュタイプ
チーズの製造工程の最初の段階のもので、他のタイプと異なり、そのほとんどが熟成させずに食べるタイプです。日本のお豆腐みたいに出来たてが美味しいフロマージュ・ブランやクワルク、ハーブやスパイスを混ぜ込んだペースト状のものやクリームチーズ、ホエーで造るリコッタなどもこのタイプに当てはまります。 特殊密封されて賞味期限の長いものも多いですが、開封後は「フレッシュ」と名がつくだけに、基本的に早めに食べきることが前提です。
パスタフィラータタイプ
イタリア語でパスタは「生地」、フィラータは「糸状に裂ける」という意味です。つまり「パスタフィラータ」とはカード(ミルクを凝乳酵素等で固めてホエーを排出した塊)を熱湯で練ることによって、繊維状の弾力のある組織になります。皆さんご存知「モッツァレッラ」がその代表。また国内産も多い「ストリングスチーズ」もパスタフィラータの特徴がハッキリとわかるチーズです。ちなみにオーストラリアではこのタイプを「カードストレッチング」と呼んでいます。
ソフトタイプ
①白カビタイプ
型出し、塩漬け後、表面に白カビを付着させて熟成させたチーズ。「カマンベール」に代表される白カビタイプですが、表面一面に繁殖した白カビは、蛋白質分解酵素を分泌し、外側からゆっくりとチーズを美味しく滑らかに熟成させていく働きを持っています。 但し、近年開発された「ステビライズ方式(Stabilize)」と呼ばれる製法で造られているチーズは芯を造らず、完熟した状態に仕上げたあと加熱処理するため、初段階から滑らかな食感をもっています。特に、ダブルクリーム(MG60%以上)、トリプルクリーム(MG75%以上)といった高脂肪チーズに用いられています。
②ウォッシュタイプ
名前のとおり、表面を塩水やお酒で洗いながら熟成させていくチーズで、匂いも強烈なものが多いのが特徴ですが、近年では匂いも味もマイルドなタイプも造られています。 オレンジがかった表皮は「リネンス菌」という納豆菌と同じ枯草菌の一種によるもので、表皮も洗う回数によって、ベタベタしたものから乾いたものまで様々です。 また、表皮に強烈な匂いがしても、中身は意外に優しいものもあり、決して匂いと味わいが比例しているわけではありません。とはいえ、通好みなチーズが多いのもこのタイプです
③シェーヴルタイプ
山羊乳のチーズの総称をフランス語では「シェーヴル(Chevre)」と呼び、(英語ではゴートチーズGoat Cheese)カテゴリーの一つとしています。それくらい多種に亘ったシェーヴルが造られており、乾燥させたり自然に生えたカビ(勿論有毒ではない)をまとった表皮のもの、木炭粉をまぶしたり、葉っぱで包まれたりしたもの、やや大型なセミハードタイプ、最近では白カビタイプに属するものやブルーを入れたものまで様々な種類が造られています。 その他、ソフトタイプには「表皮が自然なもの」や「表面に灰をつけたもの」などがあります。
青カビタイプ
いわゆる「ブルーチーズ」のこと。青カビ菌を植えたり、熟成中に自然に入りこんだりしたもの。柔らかいものからやや固めのセミハードなもの、表面に白カビを植えつけたものまで多種に亘ります。青カビは光に弱いので、保存する際にはアルミ箔などでカット面を保護して下さい。また、酸素が好きなのも青カビ菌の特徴なので、密閉したままで黄色っぽくくすんできたら、表面を薄くカットし、少しだけ空気に触れさせておくときれいな色に戻ります。 たべものにカビが生えていること(しかもブルー)自体最初はびっくりしますが、有名なロックフォールなんかは2千年も前から造られていたという歴史があります。でも、チョット前の日本では「このチーズ、カビが生えているわよ!」といったクレームも多かったのも本当の話。
圧搾タイプ
「セミハード」と呼ばれるようなチーズで、「ゴーダ」「エダム」など日本にも昔から馴染みのあるチーズもこのタイプ。大きさもやや小型なものから数十キロのものまで様々で、軽く洗ったり自然に出来た表皮やワックス加工をしたものなど、外見も多種に亘ります。 カードを型に入れ、塩漬け、熟成…といったチーズの基本的な製法で造られたものがほとんどですが、イギリス原産の「チェダー」は「チェダリング」という特殊な製法を取っているため、モロい組織になります。
加熱圧搾タイプ
チーズの中でも「固い」チーズのカテゴリーで、「加熱」とは、水分の少ない固いチーズを造る為に、製造時に温度を高温にして造ることからそう呼んでいます。 そのほとんどが数十キロもある大型の長期熟成のチーズで、パルミジャーノ・レッジャーノやグリュイエールがその代表です。
【原産地呼称統制/保護指定原産地表示】
フランス,スイス=A.O.C. イタリア,スペイン=D.O.P. 他EU諸国=P.D.O. EU(ヨーロッパ諸国)では、優れた農産物・酪農品に対し、国が補償する制度があり、固有の名称が法によって守られています。チーズもその対象の一つ。国によって規定や管理する機関は多少異なりますが、夫々その商品の産物としての特性を認め、保護しています。 EU全体では、これをP.D.O.(Protective Denomination of Origin)と呼んでいますが、この制度を最初に定めたフランスではA.O.C.、イタリアではP.D.O.という制度がこれに当てはまります。
A.O.C.
Apellation d’Origine Controlleeの略で、「原産地呼称統制」のこと。INAOというフランス農林省管轄の機関が、申請された商品を審査し許可したものでないと、A.O.C.を名乗ることは出来ません。A.O.C.に認められたとしても、 「 ①原料乳の種類、産出地域 ②製造地域と製造方法 ③熟成地域と熟成期間 ④形、外皮、重量、乳脂肪分 」 といった細かい規定があります。 例えば、フランスを代表する白カビチーズ「カマンベール」ですが、A.O.C.として正式には「カマンベール・ド・ノルマンディ Camembert de Normandie」という名称で、原料乳は牛の無殺菌乳、産地はカルヴァドス県・ウール県・マンシュ県・オルヌ県・セーヌ・マリティーム県の各県、熟成期間は21日(内16日は製造期間エリア内)、形状は直径10.5〜11㎝・高さ3㎝・重さ約250g、固形中乳脂肪最低45%以上…等々、細かい規定の元造られたチーズを指しています。つまりA.O.C.はただ許可された商品としての価値だけではなく、その素性の確かさも表しているんです。
D.O.P.
Denominazione d’Origine Protettaの略で、イタリアで「原産地呼称統制」のこと。イタリアは他のEU諸国と異なり、夫々の保護協会によって管理チェックされています。また、個々のチーズに特有のマークをつけていて、夫々デザイン的にも凝っていてオシャレなのもイタリアらしい!?