乳科学 マルド博士のミルク語り

食品ロス

2020年9月20日掲載

食品ロス
最近、食品ロスがマスコミ等で話題となっています。日本における年次別食品ロスの推定量(図1)によれば2017年における事業系ロス(製造業者や販売業者による食品廃棄)が325万トン、家庭系(家庭から廃棄される食品ロス)が291万トンとなっており、事業系は若干減少傾向ですが家庭系は殆ど変化なく全体的には大きく減少しているわけではありません。世界的にも食品ロスは大きな問題となっており、国連の持続可能な開発(SDGs)でも2030年までに食品ロスを半減させることが掲げられています。これに伴い、日本でも2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されました。

では、食品ロスが発生する原因はどのようなものなのでしょうか。乳・乳製品にも関連している原因をにまとめてみました。販売予測を誤り大量の商品が売れ残ることや販売店における1/3ルールなどが大きな原因となっています。1/3ルールとはある商品の賞味期限の1/3日以内に納品し、賞味期限の残り1/3を過ぎれば店頭から撤去し、まだ十分に喫食可能であっても(CPA コラム「賞味期限」2020年8月20日)廃棄されるという商習慣です。これは一般消費者の多くが新鮮なものはおいしく、賞味期限が近いとおいしくないと誤解しており、販売店としても売れ残った商品を限られた店頭スペースに並べておくことは売上につながらないためです。また、販売促進や新商品のPRに使う商品サンプルの量が多すぎて大量に余ってしまうこともしばしば発生しています。
私たちがC.P.A.のイベントなどで提供するチーズのサンプルが大量に余ってしまうこともありますね。尤も、そんな場合はスタッフの胃袋に収め、廃棄を最少にするようにしていますけど・・・。
一方米国の場合、日本と同じように賞味期限への理解不足、容量が大きすぎて食べきれない、開封後に賞味期限が不明になり冷蔵庫に保存しているうちに乾燥したり、カビが生えたりと劣化してしまうなど家庭における廃棄理由が指摘されています。

食品ロスを減らす対策例が農水省(農水省食糧産業局)から紹介されています。図2はそれらの中から乳・乳製品に関する例をまとめたものです。賞味期限の延長、個包装の採用、容器への付着低減などが挙げられています。
ここに示した事例以外にも、容器底面に丸みを施して最後まで掬い取ることを可能にしたヨーグルトが市販されています。ハードあるいはセミハードチーズをクラッシュして食べ残りを少なくしたチーズ、6Pタイプにカットし個包装したカマンベールも食べやすいだけでなく食べ残しを減らした商品なども市販されています。最近は輸入チーズをカットして真空包装した商品をスーパーマーケットなどでも見かけるようになりました。消費者にとっては価格が手ごろであるばかりか、食べきりサイズになっており食品ロスにつながります。しかし、カットする際にどうしても切れ端が生じますので、切れ端の利用方法を工夫しないと廃棄されることになります。

私たちチーズラバーは冷蔵庫に食べ残しているチーズがあるにも関わらず、チーズ売場に行くとあれ食べたい、これも食べたいという誘惑に逆らうことができず、ついつい買ってしまいます(ン、オレだけか?)。すると、冷蔵庫の中にある食べ残したチーズは顧みられず、いつしか干からびたり、カビが生えていたりで廃棄される運命にあります。反省!!
なお、10月は食品ロス削減月間で、10月30日は「食品ロス削減の日」となっています。今一度、それぞれの立場で食品ロスを考えてみましょう。


「乳科学 マルド博士のミルク語り」は毎月20日に更新しています。

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