世界のチーズぶらり旅

修道院のビールとチーズ

2017年8月1日掲載

シメイの街角で

ベルギーに行った、と言ったらおこがましいか。ほんの数時間ほどベルギー領内に入った。ワインやチーズを求めてヨーロッパに旅を始めて40数年、気が付けばまだベルギーに足を踏み入れる機会がなかったのは不思議である。とはいえベルギーについては子供の頃から特殊なイメージを持っていた。それは繰り返し読んだ「フランダースの犬」という物語によってであるが、さらにはこの物語の主人公のネルロ少年が死の直前に見たフランドル派の画家ルーベンスの絵を始め、ブリューゲルなどの奇妙な画家たちの作品によって私のベルギーに対する独特なイメージは形作られたのである。

ヴュー・シメイの熟成

私の初のベルギー訪問は、北フランスのチーズ、マロワールの取材で始まる。そしてそこから東に50kmほど行くと、ベルギーの小さな町シメイ(Chimay)に着く。シメイといえば一般には修道院で作るビールで有名だ。シメイの町の南方8kmの森の中に建つスクールモン修道院は比較的新しく、建設は1850年の事だが、修道士達はこの村に地場産業を興し雇用を作り出すため、その12年後には良質の地下水を使ってビールを作り始める。ビールといっても現在われわれが普段飲んでいるラガータイプとは違う古典的な製法の、いわゆるエールである。このビールが評判になると、1876年にはチーズもつくりはじめる。フロマージュ・ド・シメイの誕生である。現在は僧院と農家の協同組合の工場で作られているようだ。

スクールモン修道院

フランスのマロワール村から東に向けて走ると、すぐにベルギーとの国境を超えるのだが風景は何も変わらない。そうこうしているうちにシメイの町に入る。2km足らずの細長い街だが、ロータリーに銅製のビールの発酵釜?が鎮座していてビールの町をアピールしている。チーズ工場は町の東の端にあって、なかなか大がかり工場だ。ここで作られるのは工場に張られたポスターによれば、5種類のトラピスト・ド・シメイ(Trappiste de Chimay)がメインで、そのほか様々なチーズをつくっている。すでに製造は終わっていたが、発酵室で様々な形のチーズをみることができた。

試飲に提供されたビール

チーズ工場の見学を終えるとすぐバスで修道院へ。ここではビールが主役、といっても醸造所では巨大なタンクとパイプラインを見るだけだが、最後は院内の試飲室でのビールとチーズのコラボレーションが待っている。これまではチーズの試食といえばワインだったが、ワインのないベルギーはチーズのお相手はビールである。だが、由緒ある修道院製の由緒ある古典的なビールであれば何の不足もない。しかも、数種類のビールが飲み放題とは神様も御心が広い。チーズはビールで洗ったヴュー・シメイを含め3種類のチーズを試食したが、どうしてもビールに心が行ってしまうのは私だけではないのは、その飲みっぷりで分かります。

ヴュー・シメイ