フロマGのチーズときどき食文化

居酒屋のチーズ料理

2011年1月4日掲載

いま日本のチーズ消費量はどれくらいか知っていますか。だいたい一人当たり年間2kg程度ですね。フランス、スイス、イタリア等は20kgを越えているから、日本の10倍以上ということになります。多いか少ないか。日本の一般家庭の食卓にチーズが日常的に登場するようになってから、まだ半世紀と考えれば妥当な数字かなとも思いますが、ワインの普及度に比べれば、当事者としては歯がゆい数字かも知れません。

チーズのお好み焼きか?

私は長年チーズの普及に関わってきましたが、最初は家庭でどうしたらチーズを食べてもらえるか、散々知恵を絞らされました。餅とチーズとか、納豆とチーズとか、味噌漬けにしたり、海苔で巻いたり、寿司にしたりとあらゆる日本の食材との組み合わせを試してきました。今思えば苦し紛れのこじつけという料理もあったけど、けっこう必死でしたね。最初の頃はすべてプロセスチーズだったから限界もあったのです。 当時の酒場でチーズを出すところといえば、洋酒を飲ませるバーなどで、オードブルと称してプロセスチーズを四角や三角に切ったものを出している程度でした。やがてヨーロッパからナチュラルチーズが輸入されるようになって、チーズの多彩さを知るようになると、次第に和風の酒場でもチーズを置くようになってきます。

私は、十数年来リーズナブルな酒場(簡単にいえば一杯飲み屋)探訪をせっせとこなしていますが、ここ数年来酒場はドラスティックに代わっています。面白くなってきた。これまでオジサンの聖域だった一杯飲み屋に女性が進出してくると店も変わらざるを得ない。

まずお摘みはちまちましたオジサン好みはだめ。しっかりとした料理が要求される。いま、こうした酒場でもワインを置くのは当たり前になってきたし、それなりのおつまみも要求されるようになったのです。

最近ではクリームチーズの味噌漬けを定番にしている居酒屋も結構あるし、酒盗というカツオの内臓の塩辛にクリームチーズを合わせたものに出会った事もある。このホームページで以前紹介した油揚げにチーズを挟んで焼くキツネ・ラクレットと称する傑作もある。

こんがり焼けたチーズトマト

懐石料理なんかでもでもチーズを使っているか調べてみたら、今人気の懐石料理店の料理長が出している料理本にもクリームチーズの料理がありました。

ローカルな話題で申し訳ないが、いま東京上野のアメ横あたりが沸騰しています。新しい居酒屋が次々にできている。イタリアのワインバーもある。そんな中で店の入り口に、お好み焼き用の大きな鉄板を据えて、いろんな物を焼いている新しい居酒屋がありました。その鉄板の近くに席を取って見物していると、その鉄板にシュレッド・チーズをひと掴みずつ熱い鉄板に置いていく。チーズのお好み焼き?チーズが溶けてきたらその上にザク切りのトマトをドバッと載せた。チーズが泡立ち周りが焦げたら出来上がりです。ものの2~3分で一丁上がり。

もちろん私も注文しました。料理名はチーズトマト。焦げたチーズとトマトの酸味がなかなかいい。ホッピーをもう一杯お代わりしました。