世界のチーズぶらり旅

美味し国フランス。(農業見本市報告2)

2013年5月1日掲載

迫力のあるパルミジャーノの展示

美味し国と書いて「うましくに」と読ませる。このフレーズを使った「美味し国フランス」という題名のフランスの郷土料理の本があるが、これには、美食にあふれた美しい国フランスに対する日本人の憧れがある。言葉のもとネタは万葉歌ではあるけれど。
 

フランスの国土はほぼ六角形。その中にセーヌ、ローヌ、ロワール、ジロンドという四つの大河が流れ、南にピレネー、東にアルプス、ジュラの山が控える。さらに南と西には地中海と大西洋が広がる。このような変化に富んだ国土がヨーロッパ屈指の多彩な産物を生み出しているのである。

圧倒的なボリュームの肉製品

太陽王といわれたルイ14世は、美食は国家の威信であるとし、独創的で洗練された料理を求めた。そして自らの豪勢な食事や晩餐会を公開し、常に数百人の見物人の中で悠然と食事をした。やがて太陽王の格調高い豪勢な食事は、当時のヨーロッパ各国の王宮や貴族に伝えられ、後には世界の外交上の晩餐会ではフランス料理が定番になっていくのである。世界最高の料理といえばトップにフランス料理を挙げる人が多いが、この世界一の料理を支えているのが、変化に富んだ国土から生み出される多彩な生産物である。

コルシカのブースは猪が主役

先ごろフランスの酪農関係の偉いさんが来日して、フランスは「ミルクの大地で」、全土には1.260種のチーズがあると豪語した。このように農業大国を自認するフランスの実力はどれほどなのかと、みぞれ降るパリの見本市会場に2日間通ったのである。

見本市の展示場には大きなパビリオンが8棟あって、そのうち6棟が使われていた。その中には、農業機械や発電設備など農業経営を支援するパビリオンや、野菜やガーデニングなどのパビリオンがあるが、短いパリ滞在ではこれらを見て回る余裕はなかった。目当ては、牛、羊、山羊などのチーズに関係する家畜を展示するとフロアーと、食品を展示する四つの広大なフロアーである。

レストランはどこも満員

最初に訪れたのはフランスの周辺諸国から参加したパビリオンで、まずはイタリアチーズの迫力ある展示に驚き、英国の美しい陶器に見とれ、アラブ系の香辛料にしびれるなど、滑り出しは快調であった。次は3階建ての2フロアーいっぱいに展示されたフランスの地方別の展示場である。ここにはフランスで作られているあらゆる食品が並んでいる。農業見本市といいながら魚介類の展示もあるしカキも食べられた。食品の展示は4千種というが、圧倒的に多いのはハム、ソーセージなどの肉製品と次いでチーズの展示だが、ソフト系のチーズは管理が難しいためか少なかったのが残念。

フランスの産物は地域ごとに分けられ、それぞれの地方の特色を強調している。その中で面白かったのはコルシカ島で、猪肉の製品を前面に出して強烈にアピールしていた。

豪勢なフォワ・グラのサンドイッチ

また展示ブースのわきには郷土料理が食べられるレストランが51店もあって各フロアーに配置されているがどこも満員。レストランにも入りたかったが、無数の商品を試食しているので胃袋は満杯である。サンドイッチやクレープなどの軽食や、ワインやビールのスタンドもある。残念だったのはフォワ・グラのサンドイッチを食べる胃の余裕がなかったことだが、これほど様々な食品を味わう機会はめったにない。この見本市は13ユーロで一日楽しめる、いわば、食の遊園地といったとところで、まさに美味し国フランスを手軽に体験できるイベントである。