世界のチーズぶらり旅

AOCに認定されたプロヴァンスのちまき

2011年1月4日掲載

南仏プロヴァンスは光りと香りの国である。ヴァン・ゴッホはその手紙の中で、ローヌ河と空はアブサン色、河岸はリラの色調と書いている。明るい光とどこかハーブの香りがする乾いた風。ミディ(南仏)といえばフランス人にとっても特別な響きがあるようだ。南仏の食卓の香りの代表といえば、ニンニクの香りだ。

BANON

ニンニク入りマヨネーズともいうべきアイヨリ(ailloli)と呼ばれるソースがしばしば登場する。ルイユともいい、ブイヤベースをはじめ、様々な料理にこのソースが使われる。次に、パステスという、強烈なアニスの香りがするリキュールである。水で割ると白濁するので、プロヴァンスのミルクといわる。ご当地の人達にとっては、これがないと夜も日も明けないというほどのものだ。そして、このあたりに自生するハーブである。エルブ・ド・プロヴァンスの名でこれらの乾草ハーブが売られているし、香水で知られた町もある。

チーズを栗の葉で包む

最後にチーズ。此の地方はそれほど草は豊かではないので、大きなチーズは少なく、季節によっては牛、山羊、羊などの乳を混ぜて造ることも多い。ハーブだけを食べさせた香り高いシェーヴルなど個性的なチーズも多い。その中に去年の暮れにAOC(原産地統制名称)に認定された名品バノンがある。南フランスの朝市で、このクリの葉に包まれたチーズに出会った時は、フランスにもちまきがあったのかと、感動したものだ。せいぜい100gほどの小型のチーズだが、山羊のミルクの濃厚な味がする。一昨年、このチーズを造っているバノン村を訪れた。世界にプロヴァンスブームを巻き起こしたイギリスの作家ピーター・メイルが住んだリュベロン山脈の北側の木立の中にこの村があった。

バノン村

ラベンダー畑と深紅のひなげしの花に囲まれた静かで美しい村だ。目当てのチーズ工房は、そこから、少し入った樫の林の奥にあった。幸い、地元のおかみさんたちが、チーズにクリの葉を巻き、鮮やかな手付きでラフィア(Raphia)というヤシの繊維でしばりつける作業を見ることができた。帰りにはバノン村のカフェでプロヴァンスのミルク、パステスを飲みその強烈な香りに、旅の印象をいっそう深めたのであった。(S)