フロマGのチーズときどき食文化

イタリアのちまき

2016年4月15日掲載

チーズのカシワ餅?

5月5日の子供の日は、昔は端午(たんご)の節句といって、男の子の成長を祝う祭りでした。そして、この日は粽(チマキ)を食べることになっていたのです。


 

熟し柿を模したシェーヴル

思い出してください。「背比べ」という童謡の歌詞にこんなのがあります。「チーマーキ食べ食べ兄さんが、計ってくれた背の丈♪・・」。 そのチマキは中国から伝来しました。中国では古代より端午(5月5日)と夏至の日にチマキを食べる習わしがあったそうで、それが日本に伝わったという事ですが、この話をすると長くなるので止めますが、最近はチマキなんていうものには、お目にかからなくなりましたね。でも、この日に食べていた日本のチマキは、三角形の中国のそれと違い、びっくりマーク(!)を逆さにしたような細長い形をしています。これは、イネ科の茅萱(チガヤ)で巻くのでこんな形になり、チガヤ巻きがチマキになったんだそうです。日本にはこのように植物の葉で包んだ伝統食品が今も沢山残っています。ひな祭りのサクラ餅、江戸で作られたというカシワ餅、ササ団子、カキの葉鮨、ホウ葉鮨などなど。

日本の桜葉で包んだチーズ

こんな文化を持った日本人ですから、チーズもやっぱり葉っぱを使いたくなるようです。CPAのイベント「日本の銘チーズ百選」や「A.J.ナチュラルチーズコンテスト」などにもこの種のチーズがかなり出品されていました。古くはササの葉を巻いた物、桜の花や稲穂をあしらったチーズ。この季節のものとしては、カシワの葉を巻いたシェーヴルを作った工房がありました。同工房では柿の葉とヘタを使い熟し柿を模したシェーヴルも作ってしまった。試食できなかったので味の方は分からなかったけど、ご覧の通りなかなかユニークです。3番目の写真はイタリアの山羊乳チーズですが、なんと南伊豆産のオオシマ桜の塩漬けの葉を使っている。チーズ専門店のフェルミエが10年ほど前にプロデュースし完成したものだそうです。外見は栗の葉で巻くバノンのさくら版といったところでしょうが、でもこの日本産の桜の葉は食べられます。

シダの葉をあしらって

ヨーロッパでも植物の葉などを使うチーズは結構あります。シダの葉や栗の葉などをチーズに張り付けたチーズもありますが、これはもともと柔らかいチーズを重ねるときにお互いにくっつかないように葉っぱをチーズの間に挟んだのがその始まりだそうです。干し草を張り付けた物や、イタリアにはキャベツで巻いたものもあるらしい。スペインの青かびチーズ、バルデオンはカエデの葉で包んでいます。

だいぶ前の事ですが、イタリアのプーリア州を旅した時の事、ホテルの朝食から戻ってきた同行の人が、「おい!珍しいチーズが出ていたぞ!早く行かないとなくなるぞ」といわれて、あわててダイニングルームに降りていくと、白くて柔らかいチーズが無残に崩され大皿にのっかっていた。予感していた通り、この地方名産の「ブッラータ」でした。最近は日本でも作られているようですが、その当時は噂を聞くだけで見たことはなかった。それが目の前に現れたので大興奮。食べてみてその旨さにびっくりでした。

イタリアのチマキ?

ブッラータ(Burrata)とはモッツアレラの生地を袋状にして、その中に細かく切ったモッツアレラの生地に生クリームをまぶした物を詰め、写真のようにアスフォデルスというユリ科の植物の葉で巻いてあります。これはイタリア版のチマキだ!と思ったのでした。

このチーズは新鮮さが命だから、以前は現地に行って食べるしかなかったけど、最近はいろいろ技術が発達して少しずつ輸入されているようですが、生の葉っぱを使うのはむりなようで、ネットで見ると葉っぱナシが主流の様です。現地では包んだ葉の状態で新鮮さを見るのだそうです。葉っぱがしおれていたらもう古いという事です。