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コロンブス以降、新大陸からやってきて人類を飢えから救ったものといえば、まずじゃがいもが挙げられますが、同じくトウモロコシも我々の生活を豊かにしてくれました。
南北に細長く季節の差が大きい日本のどこででも、この二つの作物は容易に栽培でき、食糧の安定に役立ってきました。でも、じゃがいもはごく普通に見られる野菜でだけどトウモロコシの出番は少ないんじゃない、と思う向きもあるでしょう。トウモロコシはコーンスープとかコーンラーメンでお目にかかるくらいで、あまり主役としては登場しません。でもトウモロコシは世界三大穀物といわれるくらい重要な作物なのです。
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「しんとして、幅広き街の秋の夜の、とうもろこしの焼くるにほいよ」 この歌は明治の末期26歳の若さで世を去った薄倖の詩人石川啄木が、秋の札幌の夜の情景をうたったものです。トウモロコシといえば北海道。地元ではトウキビといい、今でも札幌の大通り公園ではトウキビを焼いて売ってます。啄木以来100年間ずっと札幌の街にはトウモロコシの焼く匂いが漂っているのです。トウモロコシといえば夏の物という感じがありますが北海道では秋口からが旬でした。このように焼いたり茹でたりして食べるトウモロコシは、完熟する前の柔らかい種子を食べるのですが、柔らかい期間は短くてすぐに固くなってしまう。だから皮付きのトウモロコシが店頭に並ぶ期間は短いのです。
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固くなった種子は粉に挽いて食材にしますが、じゃがいもに比べると料理はそれほど多くない。トウモロコシの原産地とされるメキシコの国民食タコスは、トルティーヤというトウモロコシ粉で作った薄焼きパンのようなものに、様々な具を包んで食べます。また南米のコロンビアやベネズェラにはアレパというトウモロコシのパンもあるそうです。ヨーロッパではトウモロコシの粉を熱湯で練り上げるポレンタという北イタリアの料理が有名ですが、これは肉料理などの付け合せにしたりします。
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トウモロコシは、人の食糧より家畜の飼料としての役割が重要です。世界中の家畜のほとんどが餌としてトウモロコシを与えられています。世界の珍味フォワ・グラの鵞鳥やフランスが誇るブレスの肥育鶏だってトウモロコシを与えて肥らせます。 夏に北海道へ行くと背が高くジャングルのように茂ったトウモロコシの畑が見られますが、これはデントコーンという家畜用のトウモロコシです。実を取るものではなく丸ごと刈り取って刻み発酵させて、サイレージと呼ぶ牛が冬に食べる保存食にするのです。かつて北海道の酪農家には三角帽をかぶったサイロという塔状の建物がありましたが、昔はこの中に細かく切ったデントコーンを詰めてサイレージを作りました。最近のサイレージはビニールシートで巻いて作るのでサイロはなくなりましたが、北海道に酪農が根付くためには、このデントコーンの役割は大きかったのです。
そのほかトウモロコシは種子から油をとったりしますが、最近ではバイオ燃料の原料として注目されトウモロコシが世界的に高騰して、フランスのフォワ・グラの生産者がピンチだという話も聞きました。トウモロコシは、いまや世界の経済を動かす農作物になっているのです。