フロマGのチーズときどき食文化

チーズをたくさん食べる装置

2013年3月15日掲載

チーズをたっぷり使うピッツア

少し奇妙なタイトルですが、まあ聞いてください。今の日本のチーズの消費量はどれくらいでしょうか。統計によれば一人当たり年間2kgを超えたところです。その中で一番チーズを食べている県は埼玉というのは意外(失礼)ですね。チーズ生産王国の北海道は3位です。埼玉県では1人年間3kgを超えているのですが、世界と比べて見るとどうかといえば、チーズの普及にかかわっている者にとっては、まだまだ歯がゆい数字なのです。日本人はどのようにチーズを食べているのでしょうか。チーズをそのまま食べたり料理に使ったりするほか、グラタン、ピザ、パスタなどチーズを使った冷凍やレトルトなどの加工食品を通してチーズを消費している場合が意外に多いのです。いわば無意識にチーズを食べているのですね。前述のチーズの消費県のランクでは面白い数字が出ていて、消費量は東高西低になっているとのこと。すなわち東日本で多く西日本は少ないとう事ですが、これはスパゲッティなどのパスタの消費量とリンクしていると報告しています。従ってウドン消費一位の四国ではチーズ消費は最下位になっているのです。

しかしそうはいっても、チーズ消費大国から見ればミクロの差でしかない。例えば一位のギリシャは年間一人当たり30kg超、2位フランスは25kg超。以下イタリア、ドイツなどが22kg台になっています。軽く日本の10倍は超えている。

焼いたバゲットで食べるラクレット

そこで、ヨーロッパ並みとは言わないまでも、食べ方に工夫すれば、とりあえず現在の2倍くらいはいけるという甘い考えを持っているのですが、そのためには一度にチーズをたくさん食べる装置というものが必要になってきます。ヨーロッパのアルプス地方は大型チーズの多い所ですがそうした装置がすでにあります。ご存じのフォンデューやラクレットなどチーズを溶かして、チーズその物の味を楽しむという食べ方ですね。例えばラクレットはスイスのヴァレ地方の郷土料理ですが、この料理によってヴァレ地方の消費量はスイスの平均消費量を大きく超えていると、現地を取材したときに聞いたことがあります。それはこの地方のレストランへ行けばわかります。一定の料金を支払うとラクレットが好きなだけ食べられました。東京にもラクレットの店が何軒かありますが、チーズのおいしさをストレートに楽しめるラクレットの店が増えれば消費量は一気に増えるでしょう。

テット・ド・モワンヌの宣伝カー

話は変わりますが、先月パリの国際農業見本市で出会ったラクレットは、縦に切れ目を入れたバゲットに溶かしたチーズをダーッと流し込むというやり方で人気のブースがあり、その豪快さに見とれてしまいました。これならじゃがいもを茹でる手間が省け、スタンドでも商売ができますね。それから、日本でもおなじみのスイスのテット・ド・モワンヌというチーズのブースものぞいてみました。このチーズは円筒形の比較的柔らかいチーズで、食べるときは切り分けずに、上部の皮をとってナイフで薄くに削り取って食べるのが昔からの食べ方だったのです。その後、現在日本でも知られるジロールという削り器?が発明されてからこのチーズの消費が一気に伸びたといいます。失礼ながら、さしたる特徴もなかったこのチーズは、カーネションの花のように削り取れるこの器具によってチーズの盛り合わせに文字通り花を添え、パーティーでは人気のチーズになるのです。このようにアイデア次第でチーズは大化けする可能性があるのです。何かいいアイデアはありませんか。