フロマGのチーズときどき食文化

チーズの盛り合わせ

2012年3月15日掲載

 フランスの普通のレストランでオーソドックスなコース料理のメニューを見ると、デザートの前にチーズの盛り合わせがあります。フランスでこのようなパターンが一般的に普及するのは、20世紀に入ってからといわれていますから、そう古い事ではないようです。日本でも1970年代になってからフランス料理がブームになると、チーズ盛り合わせが出るようになりますが、ナチュラルチーズの輸入はまだわずかだったので貧弱なものでした。現在では種類も格段に多くなり品質もよくなったので、フレンチレストランでのチーズ盛り合わせも充実してきました。

三ツ星レストランのチーズ盛り合わせ

 さて、ここで問題です。あなたはこのチーズ盛り合わせをどう呼びますか。そんな事考えたことないな、という人が大方でしょうね。チーズ関係者の間では、この盛り合わせをチーズ・プラトーと言っているのです。ネットで見るとほとんどの業者はこう呼んでます。ちょっと変な呼び方だと思いませんか。食事中にチーズをサーヴィスするというのは、フランスで確立された文化ですから、プラトー・ド・フロマージュ(Plateau de fromage)というべきでしょう。そんな固い事いわないで、英語だっていいじゃないか、というご意見ごもっともです。それならばCheese Plateじゃないでしょうか? アメリカなどではどういっているのでしょう。実はネットでも「チーズ・プレイト」派もわずかながらいますが、よく見ると一部はプレイト(お盆やチーズボード)の制作販売の業者だったりします。

 確かに英語にもPlateauと、フランス語と同じつづりの単語がありますが、この言葉は高原、高台などの意味の他に、今ではスランプの時期をプラトー期とか、出世が頭打ちになったりしたことをキャリア・プラトーと言ったりするそうです。分厚い辞書3冊にあたりましたが、英語のPlateauにはフランス語の様な、お盆とか大皿などの意味はなかった。柴田書店から出ている「チーズ大図鑑」にはチーズ・プラターになっています。どうでも良さそうな事でしょうが、言葉を仕事にしている私にとって気になるのです。チーズ・プラトーという言葉は多分1980年代後半に現れたようです。当時影響力の大きな場所で使い始めたと思われます。出所はだいたい分かっていますがいいません。多分プラトー・ド・フロマージュじゃ長ったらしくて解りにくいので、深く考えずにチーズ・プラトーと言ったのが定着したものと私は見ていますが、違った見解の人は教えてください。

若手熟成士のパフォーマンス

 さて、前段が長くなりましたが、私が初めて渡仏して、レストランでチーズ盛り合わせに出会ってから、ン十年経っていますが、このプラトー・ド・フロマージュが様変わりしているようです。おおげさに言えば20世紀までの盛り合わせは、蔓で編んだ平たい籠に葡萄の葉などを敷いて5~6種のチーズを載せてくるのが一般的でしたが、先年フランスの若手の熟成士が来て、このプラトー・ド・フロマージュの講習をやりました。この時彼はプラトー(お盆や皿)などは使わなかった。写真の様にステンレスの台に黒い紙を敷いて、チーズや小物をと並べた斬新なものでした。まあ、これもインパクトのあるパフォーマンスですが、ホテルの大宴会でもなければ現実的ではないでしょう。

オーソドックスな編み籠を使った盛り合わせ

 
  しかし、この前フランスの地方のレストランで出会った、盛り合わせもお盆やトレーは使っていませんでした。これが現在のフランスの潮流なのかはよく分からないけど、チーズの出し方も変わってきていると感じました。現在のフランスでも若者はワインを飲まない、チーズを食べないと嘆いているようですから、チーズ盛り合わせのディスプレィも変化しているのでしょうね。ネット社会になって変化はますます早くなっているので、老兵は付いて行くのは大変です。