フランスはヨーロッパきってのチーズ国と言われているけれど、フランス・チーズを知っていますかと問われれば、かつては即座にカマンベール!、という言葉が返ってきた。この地味なチーズが日本中に知られるようになったいきさつは様々だが、その後日本ではこのカマンベールの模造品?を皮切りに様々なタイプのチーズ作り出していく。その間、筆者は半世紀ほどかけて、フランス全土のチーズの産地を回ったけれど、最後に訪れたれたパリ盆地の東にある小さな古い町のチーズ売りに終止符を打った。
西海岸のノルマンディーから始まるパリ盆地は西のドイツとの国境のライン河までほぼ30km続く。その国境よりほぼ5kmの西のフランス側に、かつては日本でもアールヌーヴォーとお菓子の町で知られていたナンシー(Nancy)という町がある。私のフランス全土をめぐるチーズの旅の終止符はこの町に打つことになった。
ナンシーの町はかつてのフランスの王妃、マリー・アントワネットの父親が納めていた小さな王国だったから、町中に金ピカ豪奢な門などが立っている。そして、そのすぐそばに大きな市場が並んでいるという、親しみ安くもある不思議な町なのである。翌朝、いつものように朝早く起きてその城門のわきにある大きな市場のチーズ売り場に急いだ。そして、初めて見るそのチーズ売り場の巨大さに度肝を抜かれる。
写真を見てください。この地方は草原が広がっているせいか、小型でソフト系のチーズが多く、しかも小型で様々な形のソフト系のチーズが多いのです。そして、その売り場が大きい。
写真のような雛壇型の売り場が50m 以上は続いていたでしょうか。そこで、筆者はチーズ売り場を端から端まですべてを撮影。後で数えてみると45カットを超えていた。写真はその一部です。
©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
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「フロマGのチーズときどき食文化」は今回で終了です。14年間ありがとうございました。