乳科学 マルド博士のミルク語り

機能性食品

2024年7月20日掲載

今、市場には健康によいことを謳った食品が多数販売されています。ですが、消費者の多くは健康訴求食品にはどれほどの効果があるのか、自分や家族にも効果があるのか分からないまま、何となく購入しているが実情ではないでしょうか。そこで、今回は健康訴求食品の健康効果についてご説明します。

「いわゆる健康食品」には機能性表示食品、栄養表示食品、ならびに特定保健用食品があります。栄養機能食品はビタミン、ミネラルおよびn3系ω脂肪酸のいずれかが定められた量以上含まれている場合、それぞれの栄養成分について定められた栄養健康効果をパッケージに記載することができます。例えば、カルシウムの場合、204 mg ~ 600 mg が含まれていれば「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」と表示できます。表示の文言は決まっており、それ以上でも以下でもありません。
特定保健用食品(トクホ)は①有効成分を定め、②有効量を配合した試験食品を健康な方が定められた量を摂取し、効果があったか、なかったかを科学的に測定し、判定、③その成分が有効であるメカニズムに関する論文を提出すれば国が判定し、効果が認められれば訴求の文言とマークが許可されます。

一方、機能性表示食品はトクホと似ていますが、国の認可はなく企業が自己責任で表示を決めることができます。また、効果の検証についてはトクホでは必須なヒトでの臨床試験は必ずしも必要ではなく、有効成分が商品中に配合されている状態にて有効であることを示す科学論文(査読者によるレビューで掲載が認められた論文)を用いたシステマティックレビューを作成することで代用することができます。
少し分かりにくいかと思いますが、例えばある特定の乳酸菌が有効成分だとしたら、その乳酸菌を一定数含んだヨーグルトを摂取させた臨床試験の結果が掲載された論文(専門家が査読して、試験方法、結果の解釈などが妥当と判断したもの)やその乳酸菌が有効であることを論じた論文などを示し、因果関係を科学的に、かつ論理的に説明しなければなりません。大変そうですが、自らが臨床試験を行う必要は必ずしもないため、経費や時間が大幅に削減できます。なので、中小企業でも機能性表示食品を製造販売することができるというメリットがあります。
しかしながら、提出したシスティマティックレビューについて国が審査することはありません。このため機能性が妥当とは言い難い場合も含まれている可能性があります。
ですが、ものは考えようです。トクホや機能性表示食品は健常人を対象にした食品です。なので、マイナス効果がない限り訴求された機能性が明確でなくても実害はないわけです。ただ、消費者に誤認を与える可能性がありますから、過大な期待をせずに食べることをお勧めします。
トクホの制度が始まったのは1991年からで、有効成分を決め、ヒトでの臨床試験を行い、メカニズムを明らかにするという考え方は医薬品と極めて類似した手法です。筆者は当時、疾病のある方を対象にした医薬品と健常な方を対象にした食品を同じような考え方で効果検証するのはいかがなものかと思いましたが、研究分野が広がった大学の先生方や健康機能を訴求する商品を上市できるようになった企業はこれを機に一気に研究を進めました。その結果、様々な食品成分に健康機能があることが分かってきました。しかし、消費者はよく分からないままですし、医者は医薬品のような即効性がないため、食品成分の有効性を重視していません。
また、牛乳を含む生鮮食品の効果についてはまな板に載せようとはしません。今後制度を見直すのであれば、消費者に理解しやすく、役に立つ制度を検討してほしいと考えます。

 


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