乳科学 マルド博士のミルク語り

日本人のチーズ消費動向

2021年5月20日掲載

コロナの影響で日本人の食スタイルにも大きな影響がありました。外出自粛、飲食店の時短営業、多人数での会食やパーティの自粛などによりチーズ業界にも大きな変化がありました。C.P.A.もイベントの多くが中止、または延期を余儀なく強いられました。当然のことながら業務用チーズの消費が低迷し、反面家庭用チーズの消費が増えたことが推測できます。
図1はALIC
(農畜産業振興機構、エイリックとかアリックと呼ぶ方が多いようです)が2019年に公表した2017年度におけるプロセスチーズ(PC)原料用を除くナチュラルチーズ(NC)の種類別消費量です。縦軸を対数表示しています。家庭用と業務用を合計した消費量が多いのは教本にも書いてある通りシュレッドチーズとクリームチーズで、どちらも業務用が家庭用を大きく上回っています。シュレッドの家庭用は31,400トン、クリームチーズのそれは6,900トンです。
一方、図2は2019年度における家庭用チーズの消費動向です
(食品産業新聞ニュースWEB 2020年7月20日)。ここでもシュレッドとPCのスライスが断トツです。家庭用に消費されるシュレッドの消費量は2019年度では40,000トンで前年対比109%の伸びとなっています。
何故、このように伸びているのでしょうか?やはり、家飲みや内食志向による需要に支えられていると思われます。ある日、近所のスーパーでチーズ売場を観察しているとわずか5分間で2名の方がシュレッドをカゴに入れていました。男性が購入していることも見かけます。もっとも、自分で調理するためなのか、ご家族に頼まれて買っているのかは分かりませんが・・・。
何といっても加熱すると伸びることが見た目にもおいしさを誘うこと、まぶして温めるだけで料理がおいしくなること、安価なこと、そしてチーズの栄養と健康機能故に老若男女に適していることがシュレッドの利点なのでしょう。
しかし、クックパッドに収載されているチーズを使ったレシピ数を検索してみると、に示すようにシュレッドは4,464件であり、パルメザンやモッツァレラに遠く及びません。プロセスチーズやパルメザンのレシピが多いことは料理には全くの素人である私でも何となく分かるのですが、シュレッドの件数が少ないことと家庭用シュレッドの消費量が多いことのギャップに違和感があります。再度、クックパッドを検索すると、とろけるチーズを使ったレシピが162,660件、ピザ用チーズは34,231件見つかりました。シュレッドはこれらとろけるチーズやピザ用チーズを使ったレシピに含まれ、隠れている可能性があります。「簡便においしさアップ」というシュレッドの特性は今後のチーズ開発や販売促進にますます重要なキーワードになるのではないかと考えます。

 


「乳科学 マルド博士のミルク語り」は毎月20日に更新しています。

ⒸNPO法人チーズプロフェッショナル協会
無断転載禁止