フロマGのチーズときどき食文化

チーズ造りの道具たちの仕事を見る②

2024年3月15日掲載

<チーズの形を作る>
ヨーロッパのチーズをより深く知りたければ、それぞれのチーズはどの様にして作られているのか。そして、その原料となる乳種(乳をくれる家畜の種類)は何かを知れば、更にチーズへの理解が深まるでしょう。そこで、今回はまず、チーズの大きさや形を決める道具やその方法を紹介しよう。でも一口に形を造るといっても、ヨーロッパでは国や地方によって大小、硬軟を取り混ぜて無数のチーズがある。その中から昔からの作り方がまだ残っているという、スペインとポルトガルの小規模な工房を訪ねてみた。設備や道具は新しそうだが、ほとんどが手作業で昔からある伝統チーズを造っていた。

① スペイン西部の名品ケソ・デ・ラ・セレナの型入れ

ここではまず、チーズの形を作る型入れ作業をお見せしょう。最初の写真はスペイン西部のポルトガルとの国境に近い平原にある工房で撮ったもの。ここでは羊乳からケソ・デ・ラ・セレナ(Queso de la Serena)という、側面にサラシを巻いて熟成させる中型のチーズを作っていた。写真①は凝固させたミルク(カードという)を細かくカットし、ざっとホエイ(凝乳から出る水分)を取り除いた物を、女性達が手作業でモールドに詰め込んでいる場面。このやり方は他のヨーロッパ諸国の工房では見た事がなかったので、思わずシャッターを押す回数が増えた。

② ポルトガルのおばあちゃん職人

2013年に刊行された『チーズと文明:築地書館』という本によれば、今から千年ほど前のイングランドの荘園には、牛を育てて乳を搾りチーズを造る専門の女性達がいて、彼女たちは「デアリー・ウーマン=乳しぼり女」と呼ばれ何世紀にもわたってチーズの製法を伝えてきたと書かれている。フランスやイタリアでは、すでに男性も普通にチーズ造りに関わっているけれど、筆者が最後に訪れたこのイベリア半島の国ポルトガルのチーズ工房の職人はすべて女性で、男性は全くいなかった。この国には「チーズ造りは女性の仕事」という千年前からの伝統が今に受け継がれているようだ。
写真②はポルトガルの工房で撮影したもの。羊乳から作られたカード(凝固させた乳)を小さなモールドに詰めているこのおばあちゃんは、何年この仕事をしているのだろうか。そして、この工房の従業員のすべてが真っ白い作業服を着た女性達だった。羊乳(時には山羊乳)をチーズ・バットで凝固させたカードを、彼女たちは腕を使って細かくカットし、ステンレスの浅い水切り台に広げる。そしてこれを手作業でチーズの型に詰めていく。

③ 小さな羊乳のチーズを造るオバサン職人

この作業はでき上ったチーズの大きさや柔らかさによって、いろいろな作業があるらしいけれど、見る限りでは特別な機械や装置などは無く、チーズはすべてが女性達の手の感覚によって造られているようだった。そして、女子作業員の服装は写真で見る通り、どの工房でも形は同じ。真っ白で清潔。これは、多分20世紀の終り頃にヨーロッパの食料の製造業界あたりが決めた作業服なのだろうか。他の工房でもすべて同じものを着用していた。

④ ホエイを絞り出すのはヤングの仕事

以前にもこのコーナーで紹介したけれど、日本に初めてヨーロッパからやって来たのがポルトガル人で、今も日本語の中にビスケットとかカステラなどをはじめ、多くのポルトガル語が残っているが、なぜか日本でこの国のチーズにお目にかかった事がなかった。そんなわけで、今回は訪問国のチーズを全く知らずに旅に出たのである。訪ねてみると、牛などの大型の家畜が少ないこの国には大きなチーズは無かったけれど、中型と小型の様々なタイプのチーズが店頭にあふれていたのである。

⑤ チーズにサラシを巻いて熟成


 

 

 

 

 

©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
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